2011年10月4日火曜日

原発はいらない 新聞への疑問

 kさんの意見です。参考までに。新聞への投稿記事
「原発はいらない」
元機械工学エンジニアとして,3.11の福島第一原発の破局的事故を機に熟慮した結果,原子力は制御不能なものであり,倫理的に言っても、原発は未来にわたって生きとし生けるものすべてに悪影響を及ぼすものであって,原発はこの世にあってはならないものなのだ,との結論に到達した。原発は安いなどの作られた安全神話はウソだったことが明白になり,あとは「原発がなければ電気が足りなくなる」という嘘だけがまかり通っている。私は北海道経済産業局が公表した「北海道の昨年度の電力の需給状況」を分析して見た。北電の昨年の各種発電所の稼働率は火力が35.4%,水力は30.7%に過ぎず,原発は89.5% もあった。火力発電の能力は原発の約2倍もあるのだから,原発の分を全部火力で肩代わりさせても火力の稼働率は81.5%になるだけであり,十分な余裕を持てたはずだ。北電が「どうしても原発がなければダメだ」というのであれば,需要量と供給力の詳細を他の電力会社同様毎日明らかにすべきである。
400字以内という制約から,多少説明不足の点がありますので,長くなりますが,補足説明しますと,原子力を人間が完全に制御できるなどと思い込むのは,科学と技術に対する過信であり,傲慢この上もない思い上がりだ,と思います。人間は過ちを犯すものなんです。理論上はいかに完璧であっても,現実におこなわれる工事は決して完璧ではあり得ない,ということを現場を知る者は知っています。また,ウラン鉱山の放射性廃棄残土に始まり,原発使用後の核廃棄物に至るまで,各過程で生じている副次的放射性物質の安全な処理方法も見いだせずに後世にツケを廻すのは倫理的に許されないことです。「他人さまに迷惑をかけてはならない」これが私の信条でもあります。
そしてこの半年で,「原発は安全だ」や「原発はクリーンだ」というウソは知れ渡ったし,「原発は安い」というウソも暴かれた。あとまだ根強く残っているのは「原発がなくなったら電気が足りなくなる」というウソだけですね。今回の投書はこのウソを暴こうとして書いたものです。 実は4月22日にも私は「原発に三分の一依存しているというインチキ」と題する投稿をしたのでしたが,これもボツになっているんです。どうも道新はこの問題は載せたくないんじゃないかと勘繰りたくなるんです。
北海道経済産業局が公表した「北海道の昨年度の電力の需給状況」は,インターネットで「北海道電力需給」のキーワードで見られますが,その中に以下の表があります。
表-1 平成22年度 総需要電力量(用途別,月別実績)
表-2 産業用電力量業種別需要実績
表-3 総発電電力量実績
表-4 平成22年度末 事業用・自家用発電所の総出力
一般電気事業者というのは北海道電力のことで,特定規模電気事業者は,50KW以上であって6000ボルトの高圧受電の需要先に供給できるエネットなどの発電業者で電力自由化によって認められた事業者です。自家用は工場などが自家用に発電しているものです。
表-1は月別の用途別需要量KWHが記されており,その数値を月ごとの時間数(日数 X 24時間)で割ると,その月の平均,あるいは年間の平均電力消費量が出ます。
表-3では月ごとの,水力,火力,原子力などの発電エネルギー別の発電量実績が分かります。
表-4では年度末つまり2011年3月時点の各種発電エネルギー別の発電能力が示されています。
表-1で計算した平均電力需要量を表-4の発電能力で割ると,それぞれの発電エネルギー別の年間平均稼働率が計算できます。しかし,それはあくまでも平均値であり,ピーク時の数値ではないことに留意しなければなりません。需要と供給の問題は,需要のピーク時に供給能力が間に合うかどうかなんですが,需要が年間どのように推移しているかを北電は明らかにしていないので,平均値から類推するしかないんです。節電を呼びかけている東電ではその時点の需要値を公表して節電を呼びかけているのですが,北電はその必要を認めてはいないんですね。
手元に今年の道新で電力の需給関係に触れた記事の切り抜きが3枚あります。日付順に書くと,
7/9 「冬場の電力不足 本当?」,8/26 「電力需給警戒緩めず」,9/10 「電力 来夏6.4%不足」ですが
私のみるところでは7/9のものが一番まともで,「専門家 原発推進の「政治的宣伝」との副題もついている荻野貴生記者の記名入りです。ここでは北電発表の発電能力の他に他社から買い入れている電力についても触れており,そうすれば足りなくはならないだろうという見方をしていますが,他の2枚は北電や資源エネルギー庁の発表をそのまま流したもので,多分に原発推進側の宣伝的な匂いを感じる。8/26 の記事では12月の最大電力需要を569万KWと見込み,91.2万KW の泊3号機を動かして73万KWの余力を持てるとしている。つまり3号機運転が必要だと宣伝している形だ。だが,ここでは他社から買い入れている84万KWを考慮していない。北電広報部が回答している供給能力は原発を含まずで610万KWあり,3号機を止めても41万KWの余力(約7%)があることになる。適正余力は8%だというが,7%は許容範囲だろう。東電のように節電を呼びかければ容易にカバーできるだろう。なお,先日来札されたグリーンピースの鈴木さんは札幌の照明が明る過ぎるのに驚いておられた。9/10付けのものは東京での資源エネルギー庁の試算公表の中で北電に関する項目を報じたものだが,苫東厚真火力2号機(70万KW)が来年夏補修に入るので供給余力が32万KW不足すると書かれているのだが,そのときの需要がいくらなのかについては何も記載はない。これは泊の1,2号機を動かせ,というキャンペーンだろう。
北海道経済産業局発表の統計は今年から月ごとのデータを公表しているのだが,月ごとの平均需要電力を見ると,最大値は2月の450.1万KWであるのに対して,7月329.4万KW,8月347.1万KW,9月364.9万KWと85万KW以上少ない。夏と冬ではこれだけ需要が違うことに眼をつぶった発表であろう。ことほどさように新聞記事は眉に唾付けて読む必要がある。  
ついでに書きますと,1年間の時数は,365日/年 X 24時間/日 = 8760時間/年ですから,被曝量の年間1ミリシーベルトというのは,8760で割って1時間あたり0.114マイクロシーベルトになります。3日付の道新によると,福島県では1.030マイクロシーベルトだという。ここに子どもや妊娠中の女性が住んでおられるというのはもっての外のことで,東電の責任で疎開できるようにすべきですね。